タイトルから衝撃。
「一番正しい」アトピーの治し方!
皆さんこんにちは。
3児のパパで自然派薬剤師、かめです。
今回は、本のお話。
久々に現代医療の本を読んでみたので、読み終えた所感を。
出てきた感想としては、やはり現代医療は最新というわけではないのだな、ということ。
しかし、やはり病気に対する有力な手段の一つではある。そう思った。
著者は、近畿大学医学部の、大塚篤司ドクター。
本の内容を大まかに要約するとこうだ。
「アトピーの一番正しい治療法、それはステロイドの塗り薬による標準治療だ。
今の医学は医学的根拠(エビデンス)に基づくものである。
そして標準治療とは、治療法の中で最もエビデンスの高い確実なもののことだ。
標準治療は決して「平均的な治療」ではない。
アトピーの民間医療には様々なものが存在する。
乳酸菌、アルコールを控える、タバコを控える、睡眠の確保、ストレス軽減、肥満の解消、オメガ3脂肪酸、漢方、整体、鍼灸など。
しかしこれらはいずれも十分なエビデンスはない。また、相関関係はあるものの、因果関係は証明されていないものばかりである。
アトピー治療は現在、次々と新薬が開発されており、ステロイドによる混乱はこれから過去のものになっていくかもしれない。しかし、未だにステロイドによる標準治療はエビデンスレベル最高の治療法である。
標準治療によってアトピーが改善し、人生を楽しんでいる患者さんもたくさんいる。
これからアトピーの治療を始める方は、是非、最初に標準治療を選択して欲しい。」
主張は理路整然としており、また真剣にアトピーとアトピーの患者さんに向き合っているドクターの姿勢と人柄がうかがえた。
私もいわゆる民間医療に踏み込み、わざわざ疑いの目を持って読まなければ、素直にほぼ納得できてしまう内容であったと思う。
しかしこの本で、どうしても納得いかなかった箇所がある。
それは、「アトピーを引き起こす3つの原因」に関する主張だ。
本書では、「アトピーの原因は3つあり、①乾燥肌、②免疫システムの異常、③かゆみである」としている。
こうして書いただけでも、疑問に思う方はいらっしゃるだろう。
それは「原因」か?と。
そう。
少なくとも私の中で、これらはアトピーの原因ではない。
これらはあくまで、アトピーによる「症状」と、アトピーの「病態」だ。
私たちアトピー患者が知りたいのはそこではない。
何故、肌が乾燥するのか。
何故、免疫システムに異常が起きるのか。
何故、かゆみが起きるのか。
それが知りたいのだ。そして、そこに対策をしたいのだ。
本書はその疑問には、全く答えていない。
例えばリウマチの患者さんがいたとして、
「リウマチの原因は、痛み、免疫システムの異常、関節の変形です」
と言われたとして、それで納得がいくだろうか。
文中で大塚ドクターも自らおっしゃっているが、医学はエビデンスに基づく学問である。
そして、エビデンスとは常に「後追い」だ。
エビデンスのない部分とは、今の時点で「正しいかも知れないし、間違っているかも知れない、まだ決着がついていない部分」ということになる。
医学におけるエビデンスとは「研究結果」であり、「論文報告」のことを指す。
つまり、どんな有用な研究がなされようとも、「論文」という形で世に出ない限りは、そのエビデンスはこの世に存在しないという扱いだ。
そして、エビデンスが無い限り、医学はその部分には踏み込めず、言及は出来ない。
これが現代医学の難しいところだ。
そういう意味では、医学とは常に、最新ではないと言える。
本書ではさらに、「アトピーの真の原因」を謳う「ニセ医学」が多数存在すると言っている。
残念ながらそれは否定できないし、悪質なアトピービジネスがあるのも確かだろう。
しかしそれは、「症状」を「原因」とすり替えて議論して良いということにはならない。
この一点に関しては、本書は期待外れだったと言える。
しかし読後感はとても良く、大塚ドクターは病気を相手にしているのではなく、患者さんを相手にしているのだということがよく分かった。
大塚ドクターは文中で、「医者をやっていてよかったと思うのは、病気を治したときではなく、病気が治って喜んでいる患者さんと気持ちが共有できたとき」だと書いている。
中国で2000年前に書かれた「黄帝内経(こうていだいけい)」には、「下医は、病気を治す。中医は、人を治す。上医は、国を治す」という一節がある。
大塚ドクターは、少なくとも中医であろうと思えた。
本書の冒頭には、このように書いてあった。
「本書が目指すのは、すべてのアトピー患者さんが「保湿するだけで」きれいな肌をキープできる状態です」と。
そう。私と同じなのだ。目指すところは。
少し、いやかなり、アプローチは違うが。
一般的に、西洋医学と東洋医学は、仲が良くない。
西洋医学と、民間療法も、仲が良くない。
しかし、病気を治して幸せになることを目標とするもの同士、もう少し手を取り合っても良いと思うのだ。
少なくとも、そう思えた一冊だった。
興味を持たれた方は是非、手に取って読んで欲しいと思う。
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