「塩って、本当に健康に悪いんですかね?塩が血圧を上げるっていう理屈が、いまだによく分からないんですよ。本当に”塩”は”血圧”を上げるんですか?」
最近、こんなことを後輩の薬剤師から聞かれました。
どうも皆さんこんにちは。
3児のパパで自然派薬剤師、かめです。
日本人の塩分摂取量は世界的にも多い。
塩分の摂り過ぎは高血圧など病気の原因になるので、減塩に努めるべき。
皆さま。もはや常識とも言えるこの考え方についてどう思われるでしょうか。
塩が血圧を上げるなんて当たり前で、疑問の余地など無いと思っていないでしょうか。
今回は、後輩の疑問を受けて、塩について調べました。
すると、衝撃的な事実が出てきました。
塩は本当に身体に悪いのか
塩が血圧を上げる。
この根拠になった調査と実験が存在します。
それは、
- 1954年のダール博士の調査
- 1972年のメーネリー博士の実験
です。
ダール博士の調査
1954年、GHQのダール博士が、青森と鹿児島の塩分摂取量と高血圧の発症率について調査を行いました。
当時、鹿児島の塩分摂取量は1日14g、高血圧の発症率は20%。
対して青森の塩分摂取量は1日28g、高血圧の発症率は40%でした。
なるほど、この調査結果だけ見ると、塩分摂取量と高血圧に関係はありそうです。
しかし問題なのは、ダール博士は他の要因は一切考慮せず、この調査結果だけで「塩分摂取量と血圧には相関関係がある」と結論づけたことです。
皆さん、それには流石に無理があると思いませんか?
青森と鹿児島では、生活習慣も生活環境も全く違います。
一番わかりやすい環境の違いは、気温でしょう。
気温が低くなれば血圧が上がる、というのはもう皆さん経験的にご存じかと思います。
寒くなれば血管が収縮し、血圧は普通に上がります。それは仕方の無いこと。
寒い中血が止まってしまえば、身体は低体温まっしぐらです。血圧を上げて血の巡りを良くし、温かい血を送って体温が下がるのを防がなくてはなりません。
ちなみに東北地方の人たちが塩を多めにとっていたのには、ちゃんと理由があります。塩には、体温を上げる作用があるからです。当時は暖房が十分に発達しておらず、東北地方の寒い冬を乗り越えるためには、多くの塩分が必要だったのです。
さて、このような疑問はさておいて。
この時から、世界で減塩キャンペーンが始まったのです。
メーネリー博士の実験
これに追随するようにして発表されたのが、メーネリー博士の論文です。
博士は10匹のラットを用いて実験を行いました。
10匹のラットに高塩分食を与えて飼育し、高血圧になるかどうかを調べたのです。
結果は果たして、10匹中、4匹のラットが高血圧になるという結果でした。
この結果だけを見ると、やはり塩は血圧を上げるのだと思いますよね。
しかし、この実験でラットに与えた塩は、ありえない量でした。人間に置き換えると、1日500グラムの量だったのです。
人間に1日500gも塩を食べることができるでしょうか。できないでしょう。どれだけ味の濃い料理を作っても、1日に500gの塩を使いきるのは無理です。
これで高血圧になったからと言って、本当に塩が体に悪いと言えるのでしょうか?1日に500gも1つの調味料を食べたら、何であっても体を壊すような気がしませんか。
さらにこの実験には、もう1つおかしな点があるのです。
それは、この実験で使われたラットは、塩分感受性の高いラットであったということです。
塩分感受性については少し説明が必要ですね。
塩は、基本的には血圧を上げません。しかし、ごく一部の人だけ、確かに塩を摂ると血圧が上がってしまう人がいます。このような症状を、「塩分感受性高血圧」と言います。
つまり、皆さんが思っている通り、塩分で高血圧になってしまう人が、一部存在するということです。今では調査が進み、日本人は10~20%ほどが塩分感受性が高い人だということがわかっています。
この人たちに関しては、塩分を摂ると血圧が上がってしまうので 健康のために塩分を減らす必要があります。
さて、それではメーネリー博士の実験に話を戻しましょう。
この実験で使われたラットは、塩分感受性の高いラットであった、ということを前に書きました。これはどういうことでしょうか。そうですね。塩分を摂れば血圧が上がるラットをわざわざ使ったのです。当然、塩分を摂れば血圧が上がる、という結果が得たかったのでしょう。
塩分感受性が低いラットで同じように実験してデータを取っていれば、まだ信ぴょう性もあったと思います。しかし、そのような対照実験はされませんでした。
どうしても作為的なものを感じてしまいます。
しかしこの実験では、とても重要な事実があります。
皆さん、お気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それは、この実験で使われたラット10匹のうち6匹は、高血圧にならなかったということです。これだけ大量の塩分を摂ったにもかかわらず、です。
本当に塩分が高血圧の原因ならば、半分以上のラットが高血圧にならないなんてことがあるでしょうか。
インターソルト研究
このメーネリー博士の発表には、多くの医師が反論しました。
そして、この発表された内容を覆すための研究を行ったのです。
特に有名なものでは、1988年と1999年に行われた「インターソルト研究」があります。これは、世界32か国・52の地域で行われた、本格的な疫学調査です。
この調査の結果は驚くべきもので、何と食事の塩分量と高血圧は、関係がないというものでした。しかも、血圧と塩分摂取に関係があるとすれば、塩分摂取量が増えれるほど血圧が低下する、というものだったのです。
そう。何と、今の常識とは別の逆の結果が出たのです。
例えば中国の天津グループは平均で1日14gの塩分を摂っていたのに対し、アメリカのシカゴグループは1日6gでした。しかし、シカゴチームよりも天津チームのほうが血圧は低かったという結果でした。
青木久三教授の実験
日本でも、名古屋市立大学の青木久三教授が行った実験があります。
これもメーネリー博士の実験を受けて、ラットを使い行われたものですが、その結果はやはり、塩分は血圧を上げも下げもしないという結果でした。
塩分を摂っても、それが正常に排出できれば血圧は上昇しない、というものだったのです。
塩分を摂ることで血圧が上がるのは、腎不全が原因。塩分が正常に排出されないことで、血液中のナトリウム濃度が異常に上がってミネラルバランスが崩れ、腎不全になってしまう。それが、塩分による高血圧の本質だ、というのが青木教授の結論でした。
塩分感受性が高い人が一部存在する、ということを前に書きました。そして、確かにそういう方は減塩を行うことで血圧が下がります。
しかし一方で、塩分を多く摂取しても血圧は上がらず、減塩や利尿薬を投与しても反応しない人たちがいます。それは腎臓の機能によって、きちんと塩分を体の外に排出せる人たちです。そして、日本人全体の8割から9割がこれに該当すると言われています。
名古屋市立大学は、私の母校です。
しかし、学生時代にはそんなことは全く習いませんでした。
おかしな話だと思いませんか。
摂る塩は、塩なら何でもいいのか
さて、塩分が血圧を上げないという話をしてきました。
しかし、塩分を排出するための水を飲んでさえいれば、塩辛いものをどれだけでも食べて大丈夫なのでしょうか。
やはり、そんなことはありません。
食べる塩の質が大きく関わってきます。
結論から言えば、精製塩ではなく、自然塩を摂りましょう、ということです。
精製塩とは、公益財団法人塩事業センター(以前の塩専売公社)が発売している食卓塩のことです。塩化ナトリウムが99.9%以上、残りがマグネシウム、という商品です。
これはいわゆる工業用の製品で、塩化ナトリウムの純度が求められるため、このようにほぼ塩化ナトリウムのみで作られているのです。
もちろん食べられるので売られているわけですが、あくまで食品用ではなく工業用、かなりシャープで塩味しかない味わいです。しかも、塩化ナトリウムしか入っていないため、摂りすぎると身体のミネラルバランスが崩れ、腎臓に負担をかけるというおまけ付きです。
安さを謳う外食産業チェーンなどでは大抵この塩が使われているので、外食で食べ過ぎてしまう人は要注意です。
これに対して自然塩とは、海水を原料とし、これを平窯などで炊いたり塩田で天日干ししたりして作ります。商品にもよりますが、塩化ナトリウムの純度は約80%、残りはマグネシウムやカリウム、亜鉛、カルシウムなどのミネラル成分でできています。このミネラル分が味に複雑さを出すので、奥深い味わいになります。
ナトリウム以外のミネラルも豊富なのでミネラルバランスが崩れることもなく、食べ過ぎても大丈夫!
というか、自然塩は実は食べ過ぎることができません。自然塩は必要な時は塩味を感じ美味しく頂けますが、身体がもう塩分は十分だと感じると、他のミネラル分の苦みが前面に押し出され、不味くなるということがわかっています。
普段から取り入れるべきなのは自然塩だということがお分かりいただけたでしょうか。
しっかりと自然塩を食卓に取り入れ、自分の身体と相談しながら頂きましょう。
それが、美味しい食事と健康への近道となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、塩は本当に身体に悪いのかということで、
について、解説しました。
我が家では、塩は1種類に決めず、いくつか使いまわしています。よく使っているのは「海の精」です。あまり塩辛くなく、味に丸みがあってとても美味しいですよ。
よければ是非、試してみてください!
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