最近よく耳にするマクロビオティック。
マクロビカフェ。マクロビ食。
マクロビオティックとは一体何なのでしょうか。
皆さんこんにちは。
3児のパパで自然派薬剤師、かめです。
今回は、マクロビオティックについて書いていきます。
順番に読み進めていただけると嬉しいです。
よくあるマクロビオティックの勘違い
マクロビオティック、略してマクロビ。
昨日マクロビカフェに行ってきた、とか、最近マクロビやってるんだ、とか。
健康意識高めの方々がそんな会話をしていたりしていなかったり。
マクロビと言えば玄米菜食。草食系の健康的なやつでしょ?
そんなイメージがあると思いますが、そのイメージはもの凄くマクロビオティックの一面、というか表面しか捉えていないものであり、その勘違いを根本的に取り払っていけたらと思います。
マクロビオティックって一体、何?
結論から言うと、マクロビオティックとは東洋の哲学です。
マクロビオティックは健康法の枠には収まり切りません。
この世界の原理原則に沿って、いかに幸せに生きていくか。
それを追及しているのがマクロビオティックです。
マクロビオティックの提唱者は、実は日本人。
桜沢如一(さくらざわゆきかず)先生といいます。
彼の筆に、「五福を身につける一行を正食法(しょうじきほう)という」というものがあります。
五福とは、健康長寿、豊かな財力、無病息災、徳を好むこと、天命を全うすることの5つです。
これは元々は中国の「書経」という書物にある言葉。
「書経」の続きを見ていくと、「修身斉家治国平天下」という一文があります。
これは、「個人が心身を整えれば家庭が整い、家庭が整えば国家が整い、国家が整えば世界が整う」ということです。
おわかりいただけるでしょうか。
マクロビオティックとは、正食法によって、世界平和を目指すものなんですよ。
ここまで理解してマクロビカフェをやっている方は、凄いと思います。
だって、1軒のカフェから世界平和が発信できるなんて、凄くないですか?
マクロビオティックの根幹、「正食法」とは
これを語るには、陰と陽の話をしなくてはなりません。
マクロビオティックでは、この世の全ては陰と陽という要素で構成されているとしています。
その起源ははるかに古く、中国最古の王朝である殷王朝、そのさらに以前に存在したとされる、仙人「伏羲(ふっき)」が初めてこの真理に気が付いた人と言われています。
昼と夜、夏と冬など、この世は全て対になるものが存在し、それらがお互いに補い合い、そのバランスによって世界が成り立っているという考え方です。
人体においては、陰か陽のどちらかに偏りすぎれば病気が発症するとされており、陰と陽の真ん中、「中庸(ちゅうよう)」を目指して身体を整えていくというのが、正食法のやり方です。
桜沢先生は、特に自律神経の働きを重要視されていたそうです。
自律神経は交感神経と副交感神経から成っており、その時々の状況に応じて、緊張と緩和、つまり陰と陽のバランスを自律的に調節します。過度なストレスなどにさらされなければ、自動的に中庸化がされるというわけです。
今でこそ自律神経の働きがかなり脚光を浴びていますが、桜沢先生は50年も前に「自律神経のバランスがとれていれば、病気は絶対にしない」と断言されていたそうです。
さて、それはさておいて。
人体の陰陽のバランスをどうやって整えていくか。
マクロビオティックはそれを食事に求めたわけです。
私たちの身体は、食べたものと飲んだものと吸った空気で出来ているのは間違いありません。
マクロビオティックでは特に食事に注目し、食材や調理法に陰陽の概念を当てはめ、身体のバランスをとろうという発想なのです。例えば身体が陰性に偏っているのであれば陽性の食べ物を摂り、身体が陽性に偏っているのであれば陰性の食べ物を摂ってバランスを取ります。
これが、正食法の基本です。
大前提として、動物は陽性であり、植物は陰性です。
なので、人間として中庸に近づくためには、基本的に摂るべきものは植物ということになります。マクロビオティックが穀物菜食を勧める理由はここにあります。
そして植物の中にも陽性の性質を持つもの、陰性の性質を持つものがあり、そこで陰陽のバランスを取っていくという考え方なのです。
誤解の無いように言っておくと、マクロビオティックはベジタリアンやヴィーガンのように、動物食を禁止しているわけではありません。時には動物を食べることも良しとします。ここが、他の菜食主義と一線を画すところです。
マクロビオティックの「陰性」「陽性」とは
陰性と陽性とは一体何なのでしょうか。
これには2種類あります。1つは力の向き、もう1つは栄養素です。
力の向きおいては、
- 陽性を「右回りに凝集する力」
- 陰性を「左回りに発散する力」
と定義しています。
また栄養素においては、
- ナトリウムを陽性
- カリウムを陰性
とし、食べ物に含まれるナトリウムとカリウムの比率をみて、比較的ナトリウムの多いものを陽性の食材、カリウムの多いものを陰性の食材として扱います。
陽性の食材の代表格として、根菜類が挙げられます。
大根、にんじん、ゴボウなどです。
根菜類は地面の下にあり、地球の中心に向かって伸びていきます。すなわち、「中心に向かって集まっていこうとする力」を持っているため、陽性に分類されます。
陰性の代表格としては、ホウレン草や小松菜などの葉物野菜や、豆類などが挙げられます。
葉物野菜は地面の上にあり、空に向かって伸びていきます。つまり、「外側に向かって発散していく力」を持っていることになります。
また豆類もツルを空に向かって伸ばしていきますが、そのツルは「必ず左回りに巻いている」ことが分かると思います。ここにも、陰性の要素があります。
マクロビオティックに沿って見ていくと、この世界は色々なところで陰陽が見つけられて、ちょっと楽しくなってきますね。
マクロビオティックの料理の定義
そんなマクロビオティックには、料理にも定義があります。
「植物という陰性のものに、塩という陽性のものと熱という陽性のものを加え、中庸に近づけ、身体に負担が少ないようにして頂く」
というものです。
実に理にかなった食べ方だと思いませんか?
実際、食べて美味しいということも大きいと思いますけどね。
マクロビオティックの3大理念?
マクロビオティックには、3大理念と呼ばれるものがあります。
すなわち、「身土不二」「一物全体」「陰陽調和」です。
インターネットでマクロビオティックについて調べてみると、ほとんどのサイトにこの事が書かれています。ウィキペディアにさえ、これがマクロビオティックの3大理念であるとしています。
が、実はマクロビオティック創始者の桜沢如一さんの著書には、そんなことは一言も書いてありません。
マクロビオティックの理念を理解するには、まずは「身土不二」を知ることが重要になってきます。
マクロビオティックにおいて、「身土不二」とは医学用語です。
そして、インターネット界隈ではほとんど言われていませんが、これが3大理念の根幹を成すものとなります。
元々は仏教用語に「心身一元」というものがありますが、これを医学的に翻訳すると「身土不二」となる、というのがマクロビオティックの主張です。
身土不二とは「人間とは最も広い意味での環境の産物である」ということを意味する言葉です。
ぱっと理解するのが難しいのですが…
その土地、その気候、その自然環境の産物である人間は、それらに適応するとき生を全うし、それに反逆するときに悩み滅ぶ、としています。
人間は、その土地や気候に現れている環境に合わせて自らの陰陽を調和できれば健康長寿で平和な生活ができ、それを破ってしまえば病気や不安に襲われる、ということです。
マクロビオティックは陰陽のバランスを取って身体を整えていくということは先に述べたとおりです。
病気は陰陽の偏りによって起きることから、治療は陰性病であれば陽性薬を、陽性病であれば陰性薬を用います。
ただし薬物は、単にいわゆる薬品に限りません。土地、気候、産物、その他あらゆる陰陽環境は全て薬物であり、この意味での薬物が「食」であり、人間をつくる一切の環境、生命を維持する環境全体を「食」と定義しています。
そしてこの「食」を正しく理解し、摂取する方法を「養」と呼びます。
医道とはこの「食養」を根本とし、これを理解せず治療をしようとするものは真の医療者では無い、と桜沢先生は言っています。
身土不二は、世間的には「つまり地産地消」と説明されていることが多いですが、とんでもない。
そんな上辺だけの言葉ではないのですよ。
身土不二とは、人間を含めたその土地の環境が、上手に循環し、滞りなく回っていること、そしてその中にあってこそ人間は幸せに生きることができる、ということなのです。
地産地消どころか、今まさに騒がれている、SDGsそのものです。
マクロビオティックの3大理念とされる残りの「一物全体」「陰陽調和」とは、この身土不二の上に成り立つものとなります。
「一物全体」とは、食材は植物であれば皮や根っこ、動物であれば内蔵や骨まで、全てをいただくことでバランスが取れる。
「陰陽調和」とは、様々な食材をバランスよく食べる。
と、訳されていることが多いですが、これも非常に上辺だけの解釈です。
確かに調理法においては全くその通りなのですが、決してそれだけではなく。
人間はそれ単体で生きているわけではなく、生きる土地や環境、採れる食材、その全てで構成されているという事実を理解することが「一物全体」。
その環境で陰陽を調和させ、自然に沿って生きていくということが「陰陽調和」です。
おわかりいただけるでしょうか。
マクロビオティックとは単なる食事法や調理法ではないのです。
食事法や調理法は、単なる手段。
食事を通してその先、この世界の原理原則を体感し、身をもって理解することを目標としています。
人間は基本的にはサボる生き物です。
「時短」とか「お手軽」とか「誰にでもできる」が大好きです。
しかし、それだけでは幸せに生きることは難しいと私は思います。
にも関わらず、マクロビオティックがさも「誰にでもお手軽にできる健康法」として吹聴されていることが多いことに、もの凄く疑問を感じます。
マクロビオティックに「自らの医者であれ」という言葉があるということは、前回の記事で少し触れました。
「誰にでもお手軽にできる健康法」など存在しません。
「その人に合った健康法」があるだけなのです。それがたまたまお手軽である場合は多々あると思いますが。
様々な情報に踊らされてはいけません。「誰々がやっているから」というのも、鵜呑みにするのは危険です。あなたに合うかは分かりません。
マクロビオティックが勧めている玄米であっても、合わない人だっているのです。
参考にするのは良い。でもまずはきちんと自分で考え、自分で試しましょう。
地道でも、それが、幸せな暮らしに繋がります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、ほとんどの人が勘違いしている、マクロビオティックについて書かせていただきました。
前言通り、難しい話になってしまいましたが、要は「良いと言われるものでもあまり鵜呑みにせず、よく調べてからきちんと自分で試してみてね」ということです。
マクロビオティックについて興味が出てきて、ある程度深く学んでみたいという方には、まずは書籍をお勧めします。
インターネットのサイトは本当に玉石混交で、正食協会や日本CI協会など権威あるHPからの転載が多く、それも全てを伝えているわけではないため、かなり虫食いの知識になってしまう可能性が高いです。
本家本元、桜沢如一先生の著書を読むのが一番でしょう。
我が家の、というか私の愛読書を2冊、紹介します。下にリンクを貼っておきますので、ご興味のある方は是非、一緒に学びませんか?
それではまた!
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